40代の資産運用のニーズは他の年代より高い傾向があります。
30代では老後までの距離があり50代では老後までの距離が短く、40代がちょうど老後との距離感がよく老後のことを視野に入れ始めるからでしょう。
40歳からの資産運用は新NISAとiDeCoどっちがいいのでしょうか。
私も資産運用を行っており、同じ40代として徹底比較してみました。
この記事では、40歳は新NISAとiDeCoどっちがいいかについてFPが詳しく解説します。
・新NISAの概要
・iDeCoの概要
・60歳までに必要な資産額
・新NISAでの必要な積立額と元本
・iDeCoでの必要な積立額と元本

たまご
- 2級ファイナンシャル・プランニング技能士
- AFP(アフィリエイテッドファイナンシャルプランナー)認定者
- 資産形成コンサルタント
- 投資診断士
40歳は新NISAとiDeCoどっちがいい?
40歳からの資産運用は手段として新NISAしかありません。
現状のiDeCoでは、掛金の上限額により老後に必要な資産を捻出できない結果となりました。
仮にできたとしても、iDeCoの節税効果を含めても新NISAの方がより少ない資金で老後資金を捻出することができます。
- 40歳会社員
- 年収400万円
- 資産0から老後資金の捻出
- インフレは考慮しない
この条件を基にシミュレーションし比較していきます。
まずは、両制度を軽くおさらいしておきましょう。

新NISAとは?
新NISAとは少額投資非課税制度です。
投資で資産運用をおこなう際に、限度額までに対して投資の運用益(譲渡益・分配金/配当金)に本来かかる20.315%の税金が非課税で運用できます。
つまり、投資で得た利益は所得として扱われないということです。
外国株に投資する際は、日本課税の部分は非課税ですが外国課税の部分は徴収されますので注意が必要です。

新NISAにはつみたて投資枠と成長投資枠とで2種類あり、違いは非課税限度額と投資対象です。
併用可能で併せて1,800万円まで非課税で運用できます。
つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
---|---|---|
投資可能期間 | 無期限 | |
運用期間 | 無期限 | |
年間投資枠 | 120万円 | 240万円 |
非課税限度枠 | 600万円 | 1,200万円 |
投資対象 | 主に投資信託 | 上場株式 投資信託 |
投資戦略 | インデックス | インデックス・配当 |
非課税対象 | 運用益・分配金・配当金 |

どちらの枠で投資するかも自由に選べるよ!
iDeCoとは?
iDeCoは個人型確定拠出年金です。
掛金と運用収益の合計額を基に将来の受取年金額が決定される制度のこと。
掛金で資産運用を行い、公的年金とは別に将来の年金の捻出を助長してくれる制度です。
新NISAと同じく運用益が非課税なのはもちろんのこと、運用益を受取る際の各控除適用、掛金も全額所得控除となるなどNISAにはない多くの税制面のメリットがあります。
ただし、新NISAと違い運用益は受取る際に所得として扱われます。

自営業など | 会社員 | 公務員 | 被扶養者 | |
---|---|---|---|---|
投資可能期間 | 65歳まで | |||
運用期間 | 75歳まで | |||
年間投資枠 | 81.6万円 | 27.6万円 | 24万円 | 27.6万円 |
投資対象 | 投資信託・保険商品・預貯金等 | |||
投資戦略 | インデックス・利子 | |||
非課税対象 | 掛金控除・運用益非課税・受取時の控除 | |||
注意点 | 原則60歳まで引出し不可・運用コスト・中途脱退不可 |

新NISAより少し複雑だね…
NISAにはない多くの税制面のメリットがある一方、原則60歳まで引出せない流動性の低さや運用コストがかかる点に注意が必要です。
運用コスト
iDeCoの運用にあたり、次の様なコストがかかります。
手数料の種類 | 料金 |
---|---|
加入時手数料 | 2,829円 |
国民年金基連合会手数料 | 105円/月 |
事務委託先金融機関手数料 | 66円/月 |
運営管理機関手数料 | 0~数百円/月(運営管理機関による) |
中途脱退は原則不可で、掛金の拠出自体を自由に停止したり辞めたりできますが毎月の手数料は掛かります。
受取時の控除
一時金として全額受け取る場合は退職所得控除、年金として取り崩しながら毎月貰う場合は公的年金等控除が適用されます。
ただし、退職金・公的年金と所得が合算されますので額や受取るタイミングによっては控除額をオーバーし課税対象になる可能性もあります。
老後の生活費はいくらかかる?
まず老後に必要な資金を見ていきましょう。

総務省の2024年家計調査によると高齢単身無職世帯の平均支出額は149,286円となっています。
無職世帯なので収入は公的年金などであり、可処分所得(税金・社会保険料を引いた実質自由に使える金額)121,469円を上回っており家計は赤字となっていますね。
支出額は平均であり生活スタイルや居住地により変わるとは思いますが、高齢単身無職世帯で20万円あれば生活には困らないのではないでしょうか。

老後の生活費は20万円と設定するよ!
年金はいくら貰える?
下記条件で算出します。
・加入期間40年(20歳~60歳)
・全てが2003年4月以降の被保険者期間

月額にすると139,167円となります。
家計収支
年金受給額と必要生活費による家計収支を確認します。
年金受給月額 | 139,167円 |
---|---|
生活費 | 200,000円 |
収支 | ▲60,833円 |

毎月6.1万円を資産運用で穴埋めしないといけないね!
寿命の設定

2023年の簡易生命表による平均寿命は男性で81歳、女性で87歳となっています。
しかし、人生100年時代とも言われますので寿命は100歳に設定します。
新NISAの老後プランの設定
退職に伴い積立も60歳まで。
毎月6.1万円取り崩し、残りの不足額は退職金・貯蓄を取り崩し生活費月20万円を確保。
退職金・貯蓄で約834万円に資金が必要となりますが、これは退職金・貯蓄でカバーできるものとします。
年金受給開始。
年金と毎月6.1万円の取り崩しで生活費20万円を確保。
寿命。
このライフプランで行くと、積立が60歳までなので60歳までに100歳まで取り崩し可能な資産を用意する必要があります。
新NISAで運用する場合の60歳までに必要な資産額
60歳から毎月6.1万円の取り崩しを100歳まで行える資産額を算出します。
・取り崩し中も残高は年利5%で運用を続ける

60歳までに1,285万円を用意する必要があります。
新NISAで60歳まで必要な資産を作るための積立額
60歳までに1,285万円用意するために必要な積立額を見ていきましょう。
・投資信託にて年利5%で運用
・積立期間は40歳から60歳までの20年

40歳から毎月31,665円の積立で60歳に1,285万円が達成できます。
元本7,599,600円なので成長投資枠かつみたて投資枠との併用で可能です。
iDeCoの老後プランの設定
退職に伴い積立も60歳まで。
毎月6.1万円取り崩し、残りの不足額は退職金・貯蓄を取り崩し生活費月20万円を確保。
退職金・貯蓄で約834万円に資金が必要となりますが、これは退職金・貯蓄でカバーできるものとします。
年金受給開始。
iDeCoの受取方法を年金と一時金の併用にし、毎月6.1万円年金形式で受給し生活費20万円を確保。
運用残高を一時金で受取。
一時金で受取った残高を毎月6.1万円ずつ取り崩し年金と併せて生活費20万円を確保。
寿命。
iDeCoは75歳までに受取りを終えなければならず、75歳から100歳までは残った残額を受取り貯蓄とし切り崩していく方向で考える必要があります。
75歳から残額を新NISAにぶち込むなど他にも方法もありますが、今回は貯蓄とします。
そうなると、新NISAに比べ運用できる年数が25年減るので60歳までに必要な資産額が変わってきます。
新NISAと同様、積立が60歳までなので60歳までに100歳まで取り崩し可能な資産を用意する必要があります。
iDeCoで運用する場合の60歳までに必要な資産額
60歳から毎月6.1万円の取り崩しを100歳まで行える資産額を算出します。
実際のiDeCoの受取は、毎年の受取金額を指定し受取ることができますが残額の5%以上50%以下の範囲に設定する必要があり、今回の毎月6.1万円は5%を下回りは指定できない可能性があります。
5%の範囲内で取り崩しを行う場合、取り崩しの額が増えシミュレーションより複利効果が薄れ必要資産額が変わってきますがここでは毎月6.1万円取り崩すこととします。
・取り崩し中も残高は年利5%で運用を続ける
まず75歳から100歳まで貯蓄を毎月6.1万円取り崩すのに必要な金額を求めます。

60歳から75歳まで毎月6.1万円取り崩し75歳時点で1,830万円残るようにするためには、60歳時点で1,658万円の資金が必要になります。
面白いことに年利5%運用で取り崩し額が毎月6.1万円だと減るどころか増えていっていますね。

iDeCoで60歳まで必要な資産を作るための積立額
60歳までに1,658万円用意するために必要な積立額を見ていきましょう。
・投資信託にて年利5%で運用
・積立期間は40歳から60歳までの20年

40歳から毎月40,857円の掛金拠出で60歳に1,658万円が達成できるのですが、残念なことにiDeCoの掛金限度額をオーバーしておりiDeCoでの運用は無理です。
この時点で40歳から資産運用を行う場合、iDeCoという方法は取れず新NISAしか手段がないということになります。
ちなみに何歳からであればiDeCoで運用できるのかというと、遅くとも31歳までに拠出を開始する必要があります。


しかしこれで話が終わるのもあれなので、2025年6月から3年以内に施行される年金制度改正法により、掛金上限額が62,000円に引き上げられることが決定していることを考慮し運用できるものと仮定して話を進めてみます。
掛金控除での節税額
年収400万円の掛金41,000円(iDeCoは1,000円単位)の掛金控除による節税額は年間98,400円で、40歳から60歳までのトータル節税額は1,968,000万円となります。
この節税額は元本に回すことができるので、新NISAに大きく差をつけることができます。
iDeCoの運用コスト
一方、運用コストも考慮する必要があります。
iDeCo手数料の種類 | 金額 |
---|---|
加入時手数料 | 2,829円 |
国民年金基連合会手数料 | 105円/月 |
事務委託先金融機関手数料 | 66円/月 |
運営管理機関手数料 | 0~数百円/月(金融機関による) |
運営管理機関手数料を0円とした場合でも加入時の2,829円と毎月171円のコストが発生し、40歳から75歳まで運用した場合、計74,649円のコストがかかります。
受取時の控除
一時金として全額受け取る場合は退職所得控除、年金として毎月貰う場合は公的年金等控除が適用されます。
しかしあくまで控除であり、退職金や公的年金と金額が合算されてしまうので控除額を超えた場合は普通に課税されます。
非課税に収まったところで新NISAも非課税なので、ここでは新NISAより劣ることはあっても勝ることは決してありません。
40歳は新NISAとiDeCoどっちがいい?の結論
では、最終結果を見てみましょう。
新NISA | iDeCo | iDeCo(改正後) | |
---|---|---|---|
必要元本 | 7,599,600円 | 掛金上限額 オーバーで 運用不可 | 9,805,680円 |
掛金控除節税額 | 0円 | ▲1,968,000円 | |
運用コスト | 0円 | 74,649円 | |
受取時のコスト | 0円 | 課税の可能性あり | |
計 | 7,599,600円 | 7,912,329円 |
40歳からの資産運用は、新NISAを選んだ方がいいです。
iDeCoの最大のメリットである節税を考慮しても約31万円少ない金額で老後資金を捻出できます。
31万円程度であればiDeCoでもいいのでは?と思われる方も居るかもしれませんが、あくまで受取時に非課税にできた場合です。
非課税にするには緻密な出口戦略が必要となります。
NISA口座を開設する場合、NISAは国の制度なので証券会社による差はありません。
証券口座を選ぶ際に見逃しがちなのがNISA口座以外の機能面。
松井証券はNISAで積立てた保有残高に対して1%ポイントが付与されます。
貯まったポイントはPayPayポイント、amazon、dPOINTに交換できます。
また、松井証券口座開設者専用のMATUI BANKは普通預金金利0.41%(税引き前)の高金利で預金でも資産を増やすことができます。
その他にも資金管理が面倒なIPO(儲かる可能性の高い株を買える抽選)が入金なしで抽選可能だったり、他社では有料や機能制限などが設けてある機能が全て無料で使える投資ツールがあったりと口座開設して損のない証券会社となっています。
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状況次第でiDeCoが逆転のパターンも
今回は年収400万円をベースにシミュレーションしてきましたが、iDeCoの節税額は年収に比例して増えていきます。
年収 | 年間節税額 | 総節税額 |
---|---|---|
400万円 | 98,400円 | 1,968,000円 |
500万円 | 147,600円 | 2,952,000円 |
年収500万円になると節税効果が100万円あがりiDeCoの方がよいという結論に逆転する可能性があります。
また、拠出する掛金も節税額に影響します。
年収は400万円のままで改正後の掛金上限いっぱい拠出した場合との比較です。
掛金 | 年間節税額 | 総節税額 |
---|---|---|
41,000円 | 98,400円 | 1,968,000円 |
62,000円 | 148,800円 | 2,976,000円 |
この様に、年収と掛金が上昇するほど節税効果が増加し新NISAよりiDeCoを選んだ方がよい可能性があります。
ただし、受取時の課税の有無や他控除との併用次第で節税額が変動しますので、iDeCoの方がよいのかは自身の状況と出口戦略、新NISAとの制度の違いをよく確認してから検討する必要があります。
iDeCoで資産運用を行う場合
・口座管理手数料(国民年金基金連合会105円/月、信託銀行66円/月)
・運営管理手数料(金融機関による0円~500円)
これらの運用コストがかかります。
掛金や運用益から差し引かれるので改めて支払う手間はないのですが、運営管理手数料は金融機関の選び方次第で0円にすることが可能です。
利用期間が長いiDeCoでは、運用コストを抑えることが重要となってきます。
マネックス証券 iDeCoは運営管理手数料が無料でコストを抑えることができます。
私はiDeCoはやっていないので株式投資でマネックス証券を利用しているのですが、スクリーニング機能で連続増配の条件が指定できたりIPOが平等抽選だったりと、iDeCo以外でも重宝できる機能が多く信頼できる証券会社です。
まとめ
この記事では、40歳は新NISAとiDeCoどっちがいいかについて説明してきました。
新NISA | iDeCo |
---|---|
毎月31,665円の積立で100歳まで可能 | 掛金上限額をオーバーし運用不可 運用できたとしても新NISAより元本が多く必要 年収や掛金によっては逆転もありなので改正後に期待 |
前提条件のシミュレーションでは40歳からの資産運用は新NISAしか方法がないという結果になりました。
iDeCoの改正後はiDeCoも運用候補として選択できるようになります。
ご自身の状況に合わせてどちらがよいか選定しましょう。